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「親がNISAを始めると言い出した」。
「銀行の窓口で、母がNISAを勧められたらしい」。
それを聞いて、なんだかモヤッとした。
止めるべきか、応援すべきか、わからない——。
この記事は、そんなあなたのために書きました。

うちの母も、銀行でNISAのパンフレットをもらってきたよ。80代なのに、大丈夫なのかな…

心配になるよね。実は「何歳か」より先に、確認してほしいことがあるんだ。
申し遅れました。
私は2005年から株式投資を続けています。
2008年のリーマンショックも、なんとか乗り切りました。
——といっても、成績は正直、人並みです。
アベノミクスの上昇相場にも、うまく乗れませんでした。
だからこそ、お伝えできることがあります。
投資は、思いどおりにいかない。
その前提で、高齢の親とNISAの話を整理していきます。
なお、私はFP(ファイナンシャルプランナー)のような専門家ではありません。
制度にかかわる事実は、金融庁など公的機関の資料で確認しながら書きました。
あくまで「高齢の親を持つ、いち個人投資家」の目線の記事として読んでくださいね。
先に結論をお伝えします。
NISAが「あり」かどうかは、年齢では決まりません。
「そのお金を、何年後に使うか」で決まります。
この記事の30秒まとめ
- NISA口座は18歳以上なら年齢の上限なく作れる(金融庁)
- ただしNISAの非課税メリットは本人一代限り。相続では引き継げない(日本証券業協会)
- 認知症になると、口座のお金が動かせなくなることがある(全国銀行協会)
- 証券業界自身が「75歳以上への勧誘は慎重に」というルールを持っている
- 高齢者向けの「プラチナNISA」は、2026年7月時点で存在しない
結論:「年齢」ではなく「そのお金を何年後に使うか」で考える

投資の世界には、ひとつだけ確かなことがあります。
相場は、上がったり下がったりする、ということです。
とくに株式を中心とした投資信託など、値動きの大きい商品ほど、その幅は大きくなります。
下がったとき、慌てて売らずに「待てる」お金かどうか。
ここが分かれ目になります。
私自身の話をします。
いまのNISAには「生涯で使える枠」があります。
私はこの枠を数年かけて埋めて、そのあと10年から15年は寝かせて、それから少しずつ取り崩す予定です。
つまり、20年がかりの計画です。
50代だから組める設計だと思っています。
「なぜ10年も15年も寝かせるの?」と思いますよね。
これには、根拠になるデータがあります。
金融庁のガイドブックに、1989年以降の実績をもとにした試算が載っています。
国内外の株式と債券に、毎月同じ金額ずつ積立投資をした場合、100万円ぶんの積立が5年後・20年後にいくらになっていたか——。
その結果が、こちらです。
100万円ぶんの積立投資、その後どうなった?
1989年以降の実績(国内外の株式・債券に毎月同額を積立)
保有期間 5年
保有期間 20年
赤い部分=元本割れの範囲。
保有5年では、始めたタイミングによって元本割れ(最低74万円)がありました。
保有20年では、どの時点から始めても元本割れしたケースはありませんでした(186万円〜331万円)。
出典:金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(PDF・3ページ)をもとに作成
もちろん、これは過去の実績です。
金融庁の資料にも「将来の投資成果を予想・保証するものではありません」と、はっきり書かれています。
それでも、このデータが教えてくれることは大きいです。
5年では、足りないことがある。
20年あれば、少なくとも過去のデータでは、いつ始めても元本割れしなかった。
だから私は、最後に入れたお金でも10年から15年は寝かせて、最初に入れたお金は20年に近づける——そういう設計にしているんです。
では、80代の親が同じことをしたらどうなるでしょう。
取り崩しを始めるのは90代後半です。
その間に、医療費や介護費用が必要になるかもしれません。
そのお金が「値下がり中で売りたくない投資信託」になっていたら——。
これが、私が「年齢より、使うまでの年数」と言う理由です。
70代・80代でもNISA口座は作れます(制度の事実)

まず、制度の事実から確認しましょう。
NISA(ニーサ)は、投資の利益にかかる約20%の税金が非課税になる制度です。
金融庁の公式サイトによると、日本国内に住む18歳以上の方なら、誰でも口座を開設できます。
年齢の上限はありません。
70代でも、80代でも、制度上は始められます。
ちなみに、親世代がひと昔前に聞いた「NISA」と、いまの制度は中身がだいぶ違います。
年表で見ると、こうなっています。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 2014年 | 一般NISA開始 |
| 2016年 | ジュニアNISA開始 |
| 2018年 | つみたてNISA開始 |
| 2024年 | 新制度開始(年間最大360万円・生涯1,800万円・非課税期間は無期限) |
出典:金融庁「NISAを知る」
ここまで読むと「なんだ、始められるじゃないか」と思いますよね。
実際、Yahoo!知恵袋にも「70代前半で新NISAを始める価値はありますか?」という質問(2026年5月)が投稿されていて、たくさんの人が同じところで迷っています。
この質問者さんは、もうひとつ大事なことを聞いていました。
「万が一のとき、子どもはNISAを相続できるのか?」
——ここからが、この記事の本題です。
それでも私が慎重に考える、3つの理由

理由1:下がった相場は、すぐには戻らない
私はリーマンショック(2008年)を経験しました。
資産が目減りしていくのを、ただ見ているしかない時期が続きました。
私の場合、含み損(=売ると損が確定する状態)の期間は数年単位でした。
50代ならその時間を「待つ」ことができます。
でも80代の親にとって、数年は決して短い時間ではありません。
理由2:いまのNISAは「毎月受け取る」仕組みに向いていない
「年金の足しに、毎月分配金がもらえる投資信託を」——高齢の方に人気の考え方です。
でも、実は毎月分配型の投資信託は、いまのNISAでは対象外です。
つみたて投資枠・成長投資枠のどちらも、対象商品の要件から外れています(金融庁)。
つまりNISAは「長く育てて、あとで取り崩す」ための制度です。
「毎月の生活費の足しにしたい」というニーズとは、そもそも設計が合っていないんです。
理由3:親のお金は「守り」が最優先
高齢の親のお金には、これから出番が控えています。
医療費、介護費用、施設の入居費——。
いつ、いくら必要になるかは、誰にもわかりません。
すぐ使うかもしれないお金は、投資に回さない。
これは投資歴の長い人ほど、口を揃えて言うことです。
親のNISA口座は、相続で引き継げません


もし親に万一のことがあったら、NISAの口座はそのまま子どもに移せるの?
これ、いちばん誤解が多いところです。
答えは「移せません」。
日本証券業協会のQ&Aによると、亡くなった方のNISA口座にあった株や投資信託は、相続人のNISA口座には入れられません。
相続人の課税口座(特定口座か一般口座)で受け入れることになります。
ポイントを整理します。
①非課税のメリットは本人が生きている間だけ。
②相続した株や投資信託は、「相続が発生した日の時価」で相続人の課税口座へ移される。
→親が生前に増やした値上がり益にかかる税金(所得税)は、かかりません。
※ただし、NISAの資産そのものは、ほかの財産と同じように相続税の計算対象に含まれます。
→そして、この「相続日の時価」が新しい「買った値段(取得価額)」になります。非課税はそこで終わり。その後の値上がり分には、通常どおり約20%が課税されます。
③相続人は「非課税口座開設者死亡届出書」を証券会社に提出する必要がある。
④死亡日から届出までの間にNISA口座で受け取った配当金などは、さかのぼって課税される。
出典:日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(PDF)
ちなみに、生前贈与でも同じです。
親のNISAの中身を、子のNISAに移すことはできません(同Q&A)。
「NISAごと子どもに残せる」は、残念ながら成り立たないんです。
※相続税や贈与税の個別の判断は、税理士さんの領域です。
具体的な金額の話になったら、専門家に相談してくださいね。
親が認知症になると、口座が動かせなくなることがあります

もうひとつ、知っておいてほしい現実があります。
銀行の預金も、証券口座も、基本的には本人の意思確認ができないと動かせません。
家族であってもです。
全国銀行協会の資料には、こう書かれています。
「家族といえども預金者の預金を払い出すことはできない」。
認知判断能力が低下した場合は、成年後見人などを通じて取引するのが一般的、とされています。
ただし、まったく手立てがないわけではありません。
同じ資料には、成年後見制度を利用していない(できない)場合について、こう書かれています。
本人の医療費などの支払いを親族が代わりに手続きする行為など、「本人の利益に適合することが明らかである場合に限り」、依頼に応じることが考えられる——と。
ただし資料は、これを「極めて限定的な対応」とも明記しています。
基本はあくまで成年後見制度を使ってください、という立場です。
「家族なら大丈夫」ではなく、「例外的に認められることがある」くらいに考えておくのが安全です。
さらに同じ資料は、預金ではなく投資信託などの金融商品を解約した場合について、あとで元に戻そうとすると税金の扱いが非常に複雑になる点にも注意が必要だと指摘しています。
同じ資料には、こんなケースも紹介されています。
「預金がわずかになり、投資信託などの金融商品しかまとまった資産が残っていない場合、親族が解約(売却)を求めるケースも生じている」。
——つまり、実際に起きている問題なんです。
NISAは長期運用が前提の制度です。
でも高齢になってから始めると、「運用の途中で、本人が管理できなくなる」リスクが現実味を帯びてきます。
出典:全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年)
対策はシンプルです。
元気なうちに、家族でお金の話をしておくこと。
口座がどこにあるか、いざというときどうするか。
それだけで、ずいぶん違います。
そして、備えの仕組みにも名前があります。
・任意後見制度=元気なうちに、将来の代理人を自分で決めておく制度
・金融機関の代理人届出=あらかじめ家族を代理人として届け出ておく仕組み(名称や条件は金融機関ごとに異なります)
・家族信託=財産の管理を家族に託す契約
どれも一長一短があるので、この記事では名前の紹介までにとどめます。
気になったら、取引先の金融機関の窓口や専門家に聞いてみてください。
銀行や証券会社の窓口で勧められたときは

「窓口で勧められたから」という始め方には、少しだけ立ち止まってほしいです。
実は、証券業界には自主ルールがあります。
日本証券業協会のガイドラインでは、75歳以上のお客さんへの勧誘は慎重に、80歳以上にはさらに慎重な手続きを、という目安が示されています。
出典:日本証券業協会「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」(PDF)
業界自身が「高齢のお客さんへの勧誘は慎重にすべきだ」と決めている。
この事実は、覚えておいて損はありません。
だから、窓口で勧められても——
その場で決めない。
「家族と相談してから決めます」と言って帰ってきて、まったく問題ありません。
まともな金融機関なら、それを嫌がりません。
もう始めてしまっていたら?——慌てて売らせなくて大丈夫
「うちの親、もう買っちゃってるんだけど……」という方も、慌てないでください。
解約させることも、またひとつの投資判断です。
相場の状況によっては、慌てて売ることがいちばん損になる場合もあります。
まずやることは、売り買いではなく「事実の確認」です。
・どの金融機関の、どの口座か
・何を、いくら買っているか(毎月の積立か、一括か)
・そのお金は、生活費や医療費のお金と分けてあるか
・本人は「値下がりすることもある」と理解しているか
ここまで分かれば、「よくわからなくて不安」な状態からは抜け出せます。
もし生活費に食い込んでいそうなら、積立額を減らすことも含めて、本人と一緒に考えてみてください。
売る・売らないの個別の判断に迷ったら、専門家への相談を。
「プラチナNISA」はどうなった?(2026年7月時点)
「高齢者向けのNISAが新しくできるらしい」。
そんな話を聞いた方もいるかもしれません。
2025年、高齢者向けに毎月分配型の投資信託をNISAで買えるようにする「プラチナNISA」という構想が報道され、話題になりました。
結論から言うと、この構想は実現していません。
税金のルール変更は、毎年12月に決まる「税制改正の大綱」で確定します。
2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱(PDF)を確認すると、NISAの改正として盛り込まれたのは口座を開設できる年齢の「下限」の撤廃でした。
つまり、子ども名義でも口座を作れるようにする、という改正です。
「プラチナNISA」や毎月分配型に関する記載は、大綱の中にありません。
つまり2026年7月時点で、「プラチナNISA」という制度は存在しません。
ここは間違えやすいところなので、もう一度書きますね。
「NISAの年齢制限が変わる」というニュースは子どもの話であって、高齢者向けの拡充ではありません。
もし「もうすぐ高齢者向けNISAができますよ」という営業トークを聞いたら、現時点では正確な情報ではない、と受け止めてください。
じゃあ、親のお金はどうすれば?——3つの選択肢

ここまで読んで、「じゃあ結局どうすれば」と思いますよね。
わが家の考え方を、選択肢として3つ置いておきます。
選択肢1:使う
先ほどの知恵袋の質問にも、「残りの人生を楽しむために使っては」という趣旨の回答が寄せられていました。
旅行に行く。おいしいものを食べる。孫に会いに行く。
お金を「増やす」のではなく「使い切る」方向で考える。
これは立派な、そして幸せな選択肢です。
選択肢2:やるなら「守り」を固めてから、小さく
どうしても始めたいなら、順番だけは守ってほしいです。
・医療費・介護費用など、数年分の「使うお金」は現金で確保する
・投資に回すのは「当面使わない」お金だけ
・本人が仕組みを理解できる範囲で、少額から
・家族が口座の存在を知っている状態にする
この条件を満たせるなら、年齢だけを理由に止める必要はない、と私は思います。
選択肢3:増やすのは子世代の自分が引き受ける
私が選んでいるのは、これです。
親のお金は守りに徹する。
そして長い時間を味方にできる自分の世代が、自分のNISAで備える。
親の非課税枠は、相続で引き継げません。
そう考えると、わが家の場合は「自分の名義で増やす」ほうが納得できました。
ただし、これが正解というわけではありません。
ご家庭の事情によって、答えは変わります。
大事なのは、家族で一度話してみることです。
親のお金の話、家族だけで抱えていませんか?
親のNISAのこと、自分の老後資金のこと。
考えることが多すぎて、正直よくわからない——。
そんなときは、お金の専門家(FP=ファイナンシャルプランナー)に無料で相談できる窓口があります。
親のお金のことも含めて、まず「わが家のお金の全体像」を整理してもらうと、頭がすっきりしますよ。
親のことも含めて、「あなた自身のお金」として相談できます
※相談は無料です。※ご相談される方ご本人が20〜69歳の場合が対象です(親御さん自身の相談窓口ではありません)。
まとめ:親子で「何年後に使うお金か」を話そう

最後に、この記事の要点です。
・NISA口座は18歳以上なら年齢上限なく作れる(金融庁)
・でも「あり」かどうかは年齢でなく、使うまでの年数で決まる
・NISAの非課税は本人一代限り。相続・贈与では引き継げない(日本証券業協会)
・認知症になると口座が動かせなくなるリスクがある(全国銀行協会)
・業界ルールでは75歳以上への勧誘は「慎重に」。その場で決めなくていい
・高齢者向け「プラチナNISA」は2026年7月時点で存在しない

難しい話に見えるけど、やることはひとつ。親子で「このお金、何年後に使う?」って話してみることだよ。そこから全部始まるんだ。
切り出し方の例(親のプライドを傷つけない聞き方)
・「銀行で何か勧められたりしてない?パンフレットがあったら見せてよ」
・「実は私も最近NISAを始めたんだ。母さんは何かやってる?」——自分の話から入る
・「NISAって、相続では引き継げないらしいよ。知ってた?」——この記事をネタにする
コツは「ダメでしょ」から入らないこと。聞き役に回ると、親は案外話してくれます。
親のお金の話は、切り出しにくいものです。
でも、元気なうちにしか話せないことでもあります。
この記事が、そのきっかけになれたら嬉しいです。
一歩ずつで大丈夫ですよ。
今日の話、「わが家の場合」はどうなる?
この記事で書けるのは、一般論までです。
親の資産、ご自身の老後資金、そして相続——実際の答えは、ご家庭の数字によって変わります。
具体的に整理したくなったら、FP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談で「わが家のお金の全体像」を一度見てもらうのも、ひとつの手ですよ。
親のことも含めて、「あなた自身のお金」として相談できます
※相談は無料です。※ご相談される方ご本人が20〜69歳の場合が対象です(親御さん自身の相談窓口ではありません)。
※本記事は制度の仕組みを説明するもので、特定の金融商品の購入や売却を勧めるものではありません。
投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。
税金の個別の取り扱いは税理士に、投資の個別判断はFPや金融機関などの専門家にご相談ください。
制度の内容は2026年7月時点の情報です。
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参考文献
・金融庁「NISAを知る」(NISA特設ウェブサイト)
・金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(2023年6月・PDF)
・日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2025年9月改定・PDF)
・日本証券業協会「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則第5条の3の考え方」(高齢顧客ガイドライン・PDF)
・全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年)
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(2025年12月26日閣議決定・PDF)
