隣の家に蜂の巣ができたら?勝手に駆除できない理由と費用を誰が払うのか

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隣の家の軒下にできた蜂の巣を見上げる男性の後ろ姿

隣の家の軒先で、蜂が出入りしている。
よく見ると、灰色の丸いものができている。
そんな場面に出くわしたとき、まず頭に浮かぶのは「これ、うちが勝手に取ってもいいのだろうか」ということだと思います。

結論から書きます。
隣の家にできた蜂の巣を、勝手に取ることはできません。
ただし、黙って我慢するしかないわけでもありません。

先に、急いでいる方へ

すでに刺されて、息苦しさ・じんましん・めまい・吐き気など全身の症状があるときは、迷わず119番を。
・そのときは症状がなくても、体調に不安が残るなら医療機関へ。
・救急車を呼ぶかどうか迷うときは、#7119救急安心センター事業/総務省消防庁)で看護師などに相談できます。実施している地域のみの番号です。
・通学路や玄関先など、人が必ず通る場所に巣があるなら、法律の話より先に市区町村の窓口へ電話してください。

この記事では、国民生活センターが公開している弁護士の法律解説をもとに、「誰に何を求められるのか」「持ち主が分からないときはどうするのか」「費用は誰が払うのか」を整理しました。
私自身の実家にもスズメバチの巣ができたことがあるので、そのときの話も途中に挟んでいます。

隣の家の蜂の巣を、勝手に取ることはできません

隣の家に蜂の巣を見つけたときの判断フロー図

蜂は野生の生き物です。
だから誰が駆除してもよさそうに思えます。
ところが、建物にできた蜂の巣はそうではありません。

国民生活センターが公開している弁護士の解説では、建物にできたスズメバチの巣は建物と一体化しているため、第三者が勝手に巣を除去することはできないとされています。
巣そのものが、他人の建物の一部として扱われるということです。

よかれと思って取り除いても、他人の建物に手を加えたことになってしまいます。
気持ちは分かりますが、ここは踏みとどまったほうが安全です。

その前に、どの蜂かをざっくり確かめておく

同じ「蜂の巣」でも、緊急度はまったく違います。
練馬区が公開している見分け方をもとに、遠くから確かめられる範囲で整理します。

  • スズメバチ……体長30mmを超える大型。巣は「逆さにしたとっくりの形」で、大きいものは直径20〜30cmになります。巣を守る本能が非常に強く、興奮すると人を攻撃することがあります
  • アシナガバチ……体長20mmほどで細身。巣は「六角形の穴がたくさんあって、下か横をむいている」形で、初期は4〜5cm、初夏に10cm程度。巣に近づいたり刺激したりしなければ、人を刺すことはないとされています
  • ミツバチ……益虫で、人を襲うことはほとんどありません。3月終わりから5月中旬にかけて、20〜30cmほどの群れが数時間から数日とどまる「分蜂」が起きることがあります

参考:練馬区「スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの習性と見分け方」

見分けがつかないときは、近づいて確かめないことです。
遠くから写真を撮っておけば、あとで役所や業者に見てもらえます。

➤ 蜂そのものが怖い、刺されたらどうなるのかが気になる方は、刺されて顔が腫れたときの話も書いています。

でも「危険をどけてほしい」と求めることはできます

隣の家の人に蜂の巣のことを伝える場面のイメージ。柵ごしに話す近所同士

勝手に取れないからといって、何もできないわけではありません。
同じ解説では、建物が周囲に危険を及ぼしている場合について、こう説明されています。

  • 建物の所有者や占有者は、土地工作物管理責任(民法717条1項)に基づいて損害賠償責任を負う
  • 危険が及ぶ近隣の人は、危険の除去、つまり巣の除去を求めることができる

つまり、「取ってくれ」と求める権利は、こちらにあります。
持ち主が誰か分かっていて、連絡が取れるのであれば、まずは事情を伝えるところからです。

言いにくい相手であっても、蜂の巣は放っておくと大きくなります。
早いほど、お互いの負担は小さくて済みます。

隣が賃貸やアパートなら、誰に言えばいいのか

民法717条1項は、まず占有者(実際に住んでいる人)が責任を負い、その人が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が負う、という組み立てになっています。

そのため、順番としてはこうなります。

  • 住んでいる人が分かるなら、まずその方に伝える
  • 言いにくい、または住人が対応できないときは、管理会社や大家さん
  • それでも動かないときは、所有者へ

外壁や軒下は、住んでいる人ではなく管理する側の担当になっていることがあります。
入居者に直接言いにくいのであれば、管理会社に伝えるほうが早い場合もあります。

伝えたのに、動いてくれないとき

ここで止まってしまう方が多いと思います。
できることは残っています。

  • いつ・誰に・何を伝えたかを記録しておく(日付とやり取りの方法をメモするだけで十分です)
  • 市区町村の環境課・生活衛生課などに相談する。自治体によっては、持ち主への注意喚起や業者の紹介をしてくれることがあります
  • 危険な状態が続くなら、自治体の無料法律相談や弁護士へ。民法717条1項をふまえた話になります

なお、隣に人が住んでいる場合、このあと出てくる空家法は使えません
空家法の対象は、あくまで「誰も住んでいない空き家」です。

そして、「動いてくれないから自分で業者を呼ぶ」に流れないでください
その場合の費用がどうなるかは、あとで詳しく書きます。

【体験談】実家の軒下にスズメバチの巣ができたとき

実家の軒下にできた蜂の巣と、庭からそれを見つめる高齢の母の後ろ姿

2024年ごろのことです。
実家の母から「軒下に蜂が出入りしている」と連絡がありました。
見に行くと、軒下にスズメバチが巣を作っていました。

まず考えたのは、業者に頼むことでした。
ネットで蜂駆除の業者をいくつか調べて、料金を比較しました。

そうしているうちに、近所に蜂の巣の駆除ができる方がいることが分かったんです。
事情を話したら引き受けてくださって、気持ちばかりの謝礼をお渡しして、無事に取ってもらえました。

母は「怖かったから、本当に助かった」と繰り返し言っていました。
軒下は毎日通る場所です。
そこにスズメバチが出入りしている状態は、高齢の母にとって相当な負担だったのだと思います。

近所にたまたま駆除できる方がいたのは幸運でした。
スズメバチは、刺されると命に関わることがある蜂です。
頼める心当たりがないなら、自分や家族で何とかしようとせず、専門の業者に任せてください。

ご自宅や実家の巣なら、業者に頼むのが確実です

ここまで書いてきた「勝手に取れない」は、隣の家の巣の話です。
自分の家や実家の巣であれば、話は逆になります。
軒下や屋根まわりの巣を高齢の親に取らせるのは危険ですし、頼める心当たりがなければ、無理をせず専門の業者に任せてください。

※見積もりは無料で、内容に納得してから作業に入る仕組みです。
料金や口コミは利用者865件のアンケートをもとに検証した記事にまとめています。

そして、このとき私が当事者だったのは「自分の実家の巣」でした。
隣の家の巣となると、話はまったく変わってきます。

隣が空き家で、持ち主が分からないときは

空家法で市町村ができることの二段階(管理不全空家等は13条の指導・勧告/特定空家等は22条の助言・指導・勧告・命令・代執行)

やっかいなのは、隣が空き家で、誰の持ち物か分からないケースです。
住んでいる人がいないので、伝える相手もいません。

このとき使えるのが、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)です。
国民生活センターの解説では、この法律を活用することが考えられる、とされています。

「特定空家」に当たる可能性があります

空家法では、「そのまま放置すれば……著しく衛生上有害となるおそれのある状態」(同法2条2項)の空き家を「特定空家」と位置づけています。
大きなスズメバチの巣がある状態は、ここに当てはまる可能性があります。

市町村がどこまでできるのか

「巣ができただけで、いきなり特定空家になるのか」と思われるかもしれません。
空家法の手続きは、いきなり最終段階には進まず、二段階に分かれています

【段階1】まだ特定空家ではないけれど、放っておくと危ない空き家
このまま放置すると特定空家になるおそれがある空き家は「管理不全空家等」と呼ばれます。

  • 指導(空家法13条1項)
  • 指導しても改善しないときは勧告(同法13条2項)

【段階2】「特定空家等」と判断されたとき

  • 助言・指導(同法22条1項)
  • 改善しないときは勧告(同法22条2項)
  • 正当な理由なく従わないときは命令(同法22条3項)
  • 命令にも従わないときは行政代執行(同法22条9項)。市町村が代わりに措置をして、かかった費用を所有者から徴収します

そしてこの前提として、市町村長は立入調査を行うことができます(同法9条)。

さらに、市町村長等は課税情報等を利用して所有者を探すことが認められています(同法10条)
つまり、個人では調べようのない持ち主を、行政なら特定できる可能性があるということです。
ここが、自力で何とかしようとするのとの決定的な違いです。

役所へは「相談」ではなく「文書で申し入れる」

市区町村の窓口で書類の入った封筒を職員に手渡している場面

ここが実務的にいちばん大事なところだと思いました。
国民生活センターの解説では、役所への働きかけについてこう書かれています。

  • 単なる「相談」とは異なり、将来、行政の対応を求めるための第一歩になる働きかけである
  • そのため文書による申入れのかたちを取るべきである
  • できるだけ地域の多数の住民の連名ですることが望ましい

電話で「困っています」と伝えるだけでは、記録に残りにくいということです。
誰が、いつ、何を求めたのかを文書にしておく。
そして、ひとりではなくご近所と連名にする。

面倒に感じますが、この一手間が後で効いてきます。

申入れ書に、何を書いておくか

決まった書式はありません。
ただ、次のことが書いてあると、役所の側も動きやすくなります。

  • いつ・どこで見つけたか(発見した日、巣の場所=軒下・戸袋・庭木など)
  • 巣のおよその大きさと、蜂の出入りの様子
  • 写真(遠くから撮ったもので構いません)
  • 何が危険なのかを具体的に(通学路に面している/高齢者が毎日通る/子どもの遊び場が近い、など)
  • 市区町村に何をしてほしいのか(現地の確認、所有者の調査、所有者への働きかけ)
  • できれば回答の期限(「○月○日までにご連絡ください」)
  • 近隣の連名(住所・氏名)
  • 提出先の部署名と、受け取った方のお名前

そして、控えを1部残しておいてください。コピーで構いません。
これが「いつ、何を求めたか」の記録になります。

書き方に決まりはないので、窓口で聞きながら整えていって大丈夫です。

あわせて、自治体の制度も聞いてみる

蜂の巣の駆除について、独自の制度を持っている自治体があります。
大きく分けて、次の3つのかたちです。

  • 駆除にかかった費用の一部を補助する
  • 市が登録・指定した業者を紹介する
  • 条件を満たせば市の委託業者が無料で駆除する

ただし注意点があります。
こうした制度の多くは「自分が住んでいる家と、その敷地」を対象にしています。
隣の家の巣にそのまま使えるとは限りません。

それでも、窓口で相談すること自体に意味はあります。
所有者への働きかけにつながることもありますし、ご自宅の巣であれば、そのまま使える制度が見つかるかもしれません。

※制度の有無・条件・金額は自治体ごとにまったく違い、年度によっても変わります。お住まいの市区町村の環境課・生活衛生課などにご確認ください。

自分で業者に頼むと、費用は自分持ちになります

蜂の巣駆除の費用を誰が負担するのかを示した図

「待っていられないから、うちが業者を呼ぶ」
そう考えたくなる気持ちは分かります。
ただ、ここには注意が必要です。

国民生活センターの解説では、自分で駆除業者に頼んだ場合、業者との契約をするのは依頼した本人なので、支払いも本人がしなければならないとされています。

あとから持ち主に請求できるのか

支払った費用を、あとから所有者に請求できるのか。
これは緊急事務管理による費用償還請求(民法698条、702条1項)が可能かどうかの問題になる、と説明されています。

そして、こう釘を刺されています。

行政の調査で所有者が判明したとしても、所有者の意思に反していたかどうか、緊急性があったかどうかをめぐって、事後的に所有者との紛争に発展する可能性も少なからず考えられるため、できる限り避けるようにすべき——。
(国民生活センター『国民生活』2025年8月号「暮らしの法律Q&A」より要約)

蜂の巣を取るだけのつもりが、お金と人間関係のもめごとに変わってしまう。
それが一番避けたい結末です。
急がば回れで、行政を動かすほうが結果的に安全だということだと思います。

どのくらい待てばいいのか(動きの目安)

隣の家の蜂の巣で困ったときの動きの目安(今日・数日以内・1〜2週間・1か月)

「いつまで待てばいいのか」が分からないと、そのまま夏が終わってしまいます。
目安を置いておきます。

これは法律で決まった期限ではありません。
手続きが止まってしまわないようにするための、私なりの目安です。

  • 今日……遠くから写真を撮る/どの蜂か確かめる/その場所を通らないようにし、家族にも伝える
  • 数日以内……持ち主が分かるなら伝える。分からない・空き家なら市区町村に電話して、担当部署を確認する
  • 1〜2週間……文書で申し入れる。できれば近隣の連名で。控えを1部残す
  • 1か月動かないなら……申入れがどこまで進んだかを確認し、必要なら再度申し入れる。自治体の無料法律相談や弁護士も選択肢に

巣は夏に向けて大きくなります。
早く動いたほうが、こちらの負担も、持ち主の負担も小さくて済みます。

逆の立場になっていませんか|あなたの実家は大丈夫ですか

雨戸が閉まったままの実家を、スマートフォンを手に眺める家族の後ろ姿

ここまでは「隣の空き家で困っている側」の話でした。
でも、少し立ち止まってほしいことがあります。

誰も住まなくなった実家を持っている方は、いつのまにか「隣の空き家」の側になっている可能性があります。

遠方にあると、年に数回しか見に行けません。
その間に軒下や戸袋に巣ができていても、気づけません。
そして近所の方は、言い出しにくいまま我慢しているかもしれません。

厚生労働省の人口動態調査では、蜂に刺されて亡くなる方が毎年20人前後報告されています。
2024年は18人で、そのうち5人は発生場所が「家(庭)」と記録されています
山や森ではなく、住まいの周りで起きている事故だということです。

出典:厚生労働省「人口動態調査」死因分類X23「スズメバチ,ジガバチ及びミツバチとの接触」(e-Stat/交通事故以外の不慮の事故による死亡数(発生場所別)

そして空家法の「特定空家」は、蜂の巣に限った話ではありません。
草木、老朽化、ごみ——放置した実家は、時間とともに近隣への負担に変わっていきます。
固定資産税の扱いが変わることもあります。

まず「いくらになるか」を知るだけでも、判断は進みます

売ると決めていなくても構いません。
金額が分かるだけで、放置し続けるコストと比べられるようになります。

※対応エリアは愛知・福岡・千葉・静岡・熊本・埼玉・岐阜です。エリア外の方や、売れるかどうか分からない実家をお持ちの方は、空き家の手放し方をまとめた記事で売る・貸す・解体するの選択肢を整理しています。

➤ 誰も住まない実家をこのままにしておくと何が起きるのかは、固定資産税や特定空家の話をまとめたこちらの記事で詳しく書いています。

まとめ|取れないけれど、動かせます

  • 隣の家にできた蜂の巣を、勝手に取ることはできない(建物と一体化しているため)
  • ただし危険の除去を求めることはできる(民法717条1項)
  • 持ち主が分からない空き家なら空家法。市町村は課税情報から所有者を探せる(同法10条)
  • 役所へは「相談」でなく文書で申入れ住民の連名が望ましい
  • 自分で業者に頼むと支払いは自分持ち。あとからの請求はもめる可能性があり避けたい
  • 隣に人が住んでいる場合は空家法の対象外。まず占有者、次に管理会社・所有者へ(民法717条1項)
  • 自治体に駆除の補助や業者紹介の制度があることも。ただし多くは自分の住まいが対象

怖いのは蜂そのものよりも、「誰も動かないまま夏が過ぎること」かもしれません。
巣は放っておくと大きくなります。
取れないけれど、動かすことはできます。

この記事は、国民生活センター『国民生活』2025年8月号(No.156)「暮らしの法律Q&A」第158回(弁護士 小島直樹氏)の解説をもとに整理したものです(PDFが開きます)。
法律の適用は個別の事情によって変わります。
実際の対応にあたっては、お住まいの市区町村の窓口や、弁護士などの専門家にご相談ください。
条番号は空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号・e-Gov法令検索)の条文を確認して記載しています。

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この記事を書いた人:ロック

 高齢の親を含め、身近に高齢者が多い環境で生活しています。
 若い頃は東証プライム上場企業で経理職に従事し、生命保険の資格[上級生命保険設計士(現シニア・ライフ・コンサルタント)]も取得しました。
 その後、数十年にわたり雑貨の卸売業に携わり、品質・安全性・使いやすさの視点で商品を見てきました。
別事業として古物営業法に基づく古物商許可(公安委員会の許可)も保有し、中古品の売買・流通にも従事しています。
 2005年からは個人で株式投資を続けており、リーマンショックも何とか乗り切りました。
 家族の実体験と公的・医療情報を参考にしながら、高齢者の暮らしに役立つ情報を発信しています。
 ※医療行為の代替を目的とした情報ではありません。

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